ikiro-be alive Contemporary art from Japan 1980 until now
 Kroller-Muller Museum / オッテルロー、オランダ
 2001年4月8日[日]-7月8日[日]
 素材:現地の中古家具など、部屋、真鍮、水、電球、など
 Cooperation:Shiga Hiroyoshi, Ota Emi
















「CRITICAL POINT / Sole Owner」は斜辺が15メートルの直角二等辺三角形の閉じた空間である。
入口の扉を開けると、鑑賞者の耳には雑踏の音が聞こえてくる。これはアムステルダムで録音された音で、空間内に置かれた2つのスピーカーからはコツコツという靴音が絶えず流れている。またこの空間は一筋の光によって二等分されており、この光の筋を軸として全てのものが左右対称に配置されているため、あたかも大きな鏡が置かれているかのようでもある。二等辺三角形の底辺の中心には畳が敷かれた壇が設けられており、鑑賞者は靴を脱いでその壇に胡座をかいて座るように書かれたテキストがある。その際、脱いだ靴は壇のすぐ前の足形の上に揃えて置くように指示されていて、そこにはスポットライトがあたるように照明が施されている。鑑賞者が指示通りに畳の上に座ると、その耳のすぐ後の壁に埋め込まれたスピーカーから水の流れる音が聞こえてくる。ライン川で録音されたこの水音は、先ほどまで聞こえていた雑踏の音を消し去り、いままでいた場所とは違うどこかへ鑑賞者を誘導しようとする。

このとき鑑賞者は二等辺三角形の頂点と対峙する形になるが、そこは左右対称に置かれた「モノ」を見るのに最も適した場所でもある。水の張られたバスタブ、そこに浮かぶオモチャのアヒル、オモチャの椅子、木製のトラック、幼稚園のイス、
  ライトスタンド、丸テーブル、ヒヨコ形のコショウ入れ、ミニチュアのトラック、土産物のスノードーム、コーヒーカップ、木製の杖、アームチェア、ベッドサイドテーブル、イースターの卵形キャンドル、香炉、老眼鏡、水の入ったコップ、モップなどなど。これらの「モノ」は全てオランダのリサイクルショップで購入されたものであり、このインスタレーション作品の鑑賞者の大多数である地元の人びとに親しみ深いものである。そしてその配置は誰でもない誰かの誕生から死までを表わすものである。鑑賞者は畳の上に胡座をかき、チャプチャプという水の音を聞きながらこれらのものを眺めるわけだが、その視野の一番手前にはスポットライトに照らされた自分の靴が見える。つまりこの作品は、鑑賞者が(欧米人にとっては非日常的である靴を脱ぐという行為によって)自分の靴を置くことによってはじめて完成するものである。

なお、今後の展開として、左右反転装置を用いることによってシンメトリックに配置したTVモニターにシンメトリックな画像を映すことや、レーザーライナーを用いることによってよりシャープな光のラインで空間を二等分することなどを計画中である。

小島 久弥



CRITICAL POINT / Sole Owner 2001
素材:
紙、デジタルプリント、樹脂、木製額
サイズ:630×480×70mm