左右対称にモノを配置することで実在しない鏡面を作り出す。水と油のランデブーを試みる。床下を走る列車に輪廻する生と死の旅をさせる…。物質の変化、イメージやスケールのトリップを用い、虚と実の狭間にありながら双方が矛盾なく合致する瞬間「臨界点=(クリティカルポイント)」を表出させるべく制作を続けてきた。
臨界点とは本来、物質の状態変化を指す言葉であるが、何故ボクはこうした臨界的状況に魅力を感じるようになったのか…。遡るとそれは、台風の夜の記憶に辿り着く。
雨戸をたたく強い風、いたるところが雨漏りした我家では、コップやタライも追いつかず。畳が上げられ縁の下が現れた。そしてついには停電。そんなときボクはいつもロウソク係だった。ロウソクに火をつけ、裏返したビールの王冠にロウを垂らし、そっと立てる。早すぎても遅すぎても上手くは立たない。
1982年から展開したロウ(パラフィンワックス)を使った「不確かなモノ、それらの臨界点にみる…」このWax workシリーズも、強ち台風の夜の記憶と無関係ではないだろう。普段見ることのない床下、揺らぐロウソクの炎、天井から落ちる雫、こうした情景をふと浮かべる時、自分の作品の原風景がそこにあるのでは…などと思うのだ。





1957 名古屋市に生まれる
1975 愛知県立旭丘高校美術科卒業
1977 カリフォルニア美術工芸大学夏期セミナー参加
1978 第1回北九州絵画ビエンナーレ(北九州市立美術館/北九州市)北壮会賞受賞
1979 大阪芸術大学芸術学部美術学科卒業
1992 アーバナート・コンペティション#1(パルコ/各店)パルコ賞受賞
1995 第4回名古屋国際ビエンナーレ・アーテック ’ 95(名古屋市美術館/名古屋)招待出品
1996 米国広報・文化交流庁主催の
’ 98 インターナショナル・ビジタープログラム 招待/アメリカ
米国広報・文化交流庁及びミッドアメリカ・アーツアライアンス主催
’ 98インターナショナル・フェローシップを受けアーティスト イン レディデンス 招待
1997 The First Steps:Emerging Artists from Japan
(Grey Art Gallery/ニューヨーク)
2001 Contemporary Art from Japan:1980 until now
(Kroller-muller museum/オランダ)
2005 L gallery 開設
2020 清流の国ぎふ芸術祭 Art Award IN THE CUBE 2020
(岐阜県美術館/岐阜)入賞・審査員賞 福岡伸一賞受賞