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 小島 久弥 展
 なうふ現代
 2009年10月10日[土]- 11月8日[日]
 素材:映像、アクリル球
 Cooperation:Eto Rika, Gallery Laura, Kawamura Rumi, Vamos Crew Co.,Ltd.









小島久弥は、長年“Critical Point(臨界点)”というタイトルで制作を行っており、その作品には物質が他の物質へと、または現象が他の位相へと変化する臨界点が現れます。本作では、まず星空のような光が見えますが、しばらくするとそれは近づいてくる人が持った懐中電灯の灯りであることがわかります。虫の鳴き声が静かに響く中、ライトは草むらを照らし、中央の球体を見つけるのですが、不思議なことにその球体は、今私たちの目の前に実際に存在している物体です。そしてライトの灯りも、映像の中から私たちが今いる世界の方に伸びてきます。本作において、別の世界に飛び越える界面が“臨界点”であり、その映像は私たちに夢のような不可思議な余韻を残します。

能勢 陽子 豊田市美術館キュレーター



      

      Critical Point IN⇔OUT 2009
      素材 : 木製アンティーク(手)、ガラス球、
      鉄道模型(街路灯、線路)、アクリル板、
      真鍮など
      サイズ : 315×230×50mm

 

夜空の星雲と月のような光。光が音もなく動きはじめたかと思うと、ピタリと止まり街路灯を思わせる姿となる。虫の音が響き、遠くを電車が横切る。再び光は動きはじめる。虫の音、響く靴音、その動きはまるで懐中電灯を手に何かを探しているようだ。

まもなく光は、実際の床面に置かれた透明な球体をみつける。しかし、ガラスに阻まれ球に触れることはできない。この時、壁面は単なるスクリーンではなく、「あちら」と「こちら」を隔てるcritical point(境界)となる。懐中電灯の光が、球体や草花を照らし影を落とす様は、何の不思議もない光景だ。しかし、すぐにそれが錯覚であることに気付く。光は飽くまで投影された映像でしかなく、虚の光によって影が生み出されるはずはないからだ。

アナログでシンプルな撮影方法を用いながらも、壁面と床面に映像を照射することで、二次元と三次元を融合させるIN ⇔ OUTシリーズ。映像が実際のオブジェクトと関わる時、床に伸びる影(虚)は、限りなく実に近づく。観る者は約10分の短いストーリーの中に、光(映像)を触媒に、実が虚に侵食されるファンタジーを体験するだろう。