Kojima Hisaya

アートプロジェクト「ART in MINO 土から生える 2024」
髙田窯場跡(多治見)
2024年10月18日[金]-11月17日[日]
素材:陶、大理石、ガラス、鉄、鉛、アクリル、消えかけの蛍光管、遺留品(陶作品、流木、自然石、ドロップ缶)、竿秤、押切り、釜鎖、ラピスラズリ、ハロゲンランプ、コード、山砂、スコップ、模型、草花、カメラ、プロジェクター、アクリルミラー、アルミ複合材、ステンレスなど
 Cooperation:Eto Rika

既に「土から生え」ていた蔦。
床に這う蔦は時間や歴史、水の流れなどを想起させた。
近年、臨界点(クリティカルポイント)が迫っている、
いやもうその只中にいるのだと感じる事象が続く。
自然と人工、虚と実、内と外、生と死 …
それらをこの高田の窯場跡で交錯させる時、
何が立ち上がるだろうか。

床を這う蔦  2024年5月12日、初めて現場の下見をした。「夏蔦」が屋外から建屋の中に入り込み、壁や床を這い尽くしている様子は、このモロ(窯場の作業場)が機能を失ってからの長い時の流れを感じさせた。屋外の葉と比べれば小さなそれらの葉は建屋東側の地中より水を吸い上げ、窓から差し込むわずかな光で光合成をしていた。その姿に自然のたくましさとけなげさを感じずにはいられなかった。そして、文字通り「土から生えている」その様に「作品は概ねできている」、また直感的に、この建屋を縮尺した「モロの鉄製モデル」を場の中心に、さらにその中心に光源を設置しようと考えた。同時に、モデルの東面から蔦を入り込ませ、現実と入れ子状にしようとも。
  今年の夏の暑さは、ただでさえ過酷な環境で命を繋いでいた蔦にも影響を与え、葉は次第に枯れていった。しかし20mもの距離を横断し、西の壁にまで到達した蔦は奇跡的に展覧会が終了するまで緑を保ち、現実にはない窓〈window〉 に、その若葉を絡ませた。
  制作を進める中、枯れてゆく蔦を補うかのように「葛」が南面の窓下から入り込んできた。そのつるは太く、電気コードと見間違えるほどだった。葛の成長は著しく、1日に約30cmのスピードで伸びた。また、新たに建屋に入り込んできた蔦もぐんぐんと伸びた。
  地球上では、なすすべもない自然災害が増え続けている。今回、この場に生えていた植物を用いて、それに警鐘を鳴らすような作品になればと思った。文明の発展が自然に悪影響を与えてきたことは明白だ。それでも答えを見つけようとしながら、なんとか生きようとする。我々は虚構の窓辺に寄り添う、か弱い蔦の若葉のようなものかもしれない。
space | 空間 わたしたちが生まれる前から

建屋東面の外側は土手になっており、建屋内側のコンクリートブロックにまで水が沁みている。壁面に円形のスポットライトを当て惑星のイメージを、縦横無尽に這う蔦の間には様々な素材、大きさの球体を置き、マクロでもあり、ミクロでもあるイメージを喚起できればと考えた。また、床面に水を打つことで、スポットライトを反射させた。
画面左方の黒と土色の陶の球体は、阿曽藍人氏の作品。それより少し右側の白色の陶の球体は、日置哲也氏の作品。
drop | 雫 昇っているのか堕ちているのか

元々この場にあった机の上に、建屋に残されていたものをまとめて置いた。壁に直接書かれたメモ書きなども、モロの記憶を物語っている。 この建屋は大雨になると雨漏りがする。また、降り積もる記憶のイメージをガラスの雫に託した。懐かしさや不安感、過去からの呼びかけのようなものを想起させたく、机の下には切れかけの蛍光管を配した。
〈current house〉(後述)への電源もここから供給されている。机上の丸い石(遺留品)は〈space〉の発想の原点となった。
搬入後に分かったのだが、沈子(漁の際、網につけるおもり)工場が廃業した後、ここは陶芸家のシェアアトリエになったという。机上の陶作品や丸い石や流木、ドロップ缶は、この場を借りていた陶芸家・五味謙二氏が残していったものだった。
ガラスの雫は、新實広記氏の手によるもの。
judge | 均衡 いずれ審判は下る

〈current house〉(後述)へと向かう蔦や葛、電気コードが押切りの刃の下を通過している。押切りの刃は竿秤の皿の上のラピスラズリにより均衡が保たれている。ラピスラズリが失われるとバランスを崩し、すべてが断ち切られてしまう。存在するもの全ては、ほんの少しバランスを崩してしまうだけで危機的な状況に陥ってしまうのではないだろうか。
ラピスラズリは人類に認知され、利用された最古の鉱物とされている。まるで地球のような色合いだ。
current house | この場 内にいるのかあるいは外界から

この建屋の1/20の鉄製モデルを場の中心に置いた。モデルの中心には光源を設置。灯が点ると、相似形に伸びた光は実際の窓へと向かう。かつて活気のあった最盛期には、このモロでの作業も夜間まで続いていただろう。
2分30秒の間隔で、30秒間灯が点る。灯はフェードインするように緩やかに点き、フェードアウトするように緩やかに消える。